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糖尿病の診断・治療について

糖尿病について

ブドウ糖は生物が生きていくための主要なエネルギー源であり、血液中に含まれるブドウ糖の濃度を示したものが血糖値です。血糖値は高くても低くても生体に悪影響を及ぼすため、数種類のホルモンにより厳格に調節されています。その中でも膵臓から分泌されるインスリンは、血糖値を低下させることの出来る唯一のホルモンです。 インスリンは血液中のブドウ糖を各種細胞(臓器)にエネルギー源として供給する働きをもっています。
食事を摂取すると誰でも血糖値が上昇するのですが、血糖値の動きに鋭敏に反応しインスリンが分泌され血糖値はコントロールされます。
インスリンの量、もしくは作用(働き)が様々な原因により不足すると慢性的に血糖値が高くなり、この状態を糖尿病と言います。

糖尿病は1つの原因で起こるのではなく、いくつかの遺伝素因にいくつかの環境因子が加わり発症する多因子疾患です。誘因と増悪因子の例を挙げると体質、加齢、食生活(過食)、アルコール過飲、運動不足、喫煙、感染症、肝臓疾患、膵臓疾患、内分泌(ホルモン)疾患、悪性腫瘍、妊娠、手術、外傷、ストレス、一部の薬の副作用などがあります。

糖尿病の分類

糖尿病は全て一緒ということではありません。
発症にいたる誘因や形式、期間などにより分類されます。

1型糖尿病

インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊される、絶対的なインスリン欠乏状態です。日本では全糖尿病患者の1~3%とされ若年に多いが、高齢者にも発症することがあります。1型糖尿病の方は年齢関係なく、生存のためにはインスリン注射が必要となります。

2型糖尿病

インスリンは分泌されているのですが分泌される量不足やタイミングの不良、十分な量は出ているが作用不足(インスリン抵抗性)など、インスリンの相対的不足状態です。
日本では95~99%とされ、食事や運動など生活習慣の乱れにより近年増加している糖尿病はこちらのタイプです。生活習慣の改善に加え、経過により内服薬やインスリン注射が必要となります。近年、新しく登場したインクレチン製剤も適応となります。

その他

  • 遺伝性
  • 2次性(膵疾患、肝疾患、内分泌疾患、薬剤、感染症、悪性疾患など)
  • 妊娠糖尿病

糖尿病の症状について

血糖値の高い状態が続くと、多彩な症状が見られるようになります。
のどの渇き、多飲、多尿(頻尿、夜間尿)、だるさ、疲れやすい、感染症(カゼなど)にかかりやすく治りにくい、体重減少など

合併症について

合併症には急性合併症と慢性合併症があります。

急性合併症

  • 糖尿病性ケトアシドーシス
  • 高浸透圧性高血糖昏睡

ここでは詳細を省きますが、これらは急速に全身状態が悪化し昏睡、死へと至る危険な状態であり、専門医による治療が早急に必要となります。

慢性合併症

初期には無症状で経過し糖代謝異常を指摘されても放置される原因となることが多いのですが確実に身体を蝕み、高血糖状態が長期間持続すると慢性合併症を引き起こします。
慢性合併症として恐れられているものには次のようなものがあり、糖尿病の前段階(境界型糖尿病)のうちから進行し始めているとされています。

眼症
  網膜症:眼底出血など(成人後の失明原因の第2位)
  ほかに白内障、緑内障、黄斑浮腫など
腎症
  蛋白尿、浮腫、腎不全(新たに透析導入となる原因の第1位)
神経症
  末梢神経障害:感覚障害(しびれ、痛み、知覚低下)、こむらがえりなど
  自律神経障害:起立性低血圧、胃腸障害(便秘、下痢)、膀胱障害、勃起障害など
動脈硬化
  脳血管:脳梗塞、脳出血
  冠動脈:狭心症、心筋梗塞
  末梢動脈:閉塞性動脈硬化症(壊疽、切断の危険)
その他
  認知症、歯周病、筋萎縮、皮膚病(おでき、水虫、湿疹など)、皮膚の変色や皮膚硬化、潰瘍・壊死、骨粗鬆症など
  関連の深い病気として高血圧症、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)など

これらは進行・悪化すると生活に支障を来すだけでなく、生命に危険を及ぼします。
早期のうちに適切な治療を開始し良好な血糖コントロールを維持することで、合併症のリスクや進行を予防することが出来ます。

当院の治療について

基本的には、糖尿病治療ガイドラインに沿った治療を行います。

治療の主軸となるのは、食事療法と運動療法です。
これらは長期的に続けることが重要であり、やみくもに頑張っても逆効果となることがあります。身体の状態は皆さん違いますので、適切なアドバイスを受けることが重要です。

食事や運動療法で経過が不良、もしくは血糖値が高いと判断される際には薬物療法が併せて行われます。薬物療法には内服薬と注射薬があり、 患者さん一人一人の状態により単独もしくは複数の薬剤を組み合わせて使用します。 薬物療法が開始された場合でも基本は食事・運動療法であることには変わりありません。

治療薬の種類

糖尿病での薬物療法は血糖値やHbA1c値だけでなく、身体の状態、合併症、年齢などにより使用する薬剤が異なるため、糖尿病だからといって皆さんが同じ治療薬になるとは限りません。

下記にあるような内服薬、注射薬をそれぞれ単独、もしくは併用することで、ひとりひとりにあった治療方法が選択されます。

内服薬

インスリン分泌促進薬:膵臓に作用してインスリン分泌を促進します。

  • 長時間作用 スルホニルウレア薬(SU薬)
  • 短時間作用 速攻型インスリン分泌薬(グリニド薬)

インスリン抵抗性改善薬:インスリン作用を改善、血糖値をあげにくくします。

  • チアゾリジン薬
  • ビグアナイド薬

αグルコシダーゼ阻害薬:小腸でゆっくり糖吸収させ、食後高血糖を抑制します。

DPP-4阻害薬:インクレチンは血糖値に応じて小腸から分泌されるホルモンで、インスリン分泌を促したり、血糖を上げるグルカゴン分泌を抑制します。DPP-4阻害薬はインクレチンの分解を阻害、働きを高めて血糖値を下げます。

SGLT2阻害薬:血中の糖を尿に排泄、インスリンと関係なく血糖値を下げます。また、血圧や尿酸値、脂質の軽快や脂肪肝の改善、体重減少も期待できます。

イメグリミン塩酸塩:血糖依存性にインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓や骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用の2つの血糖降下作用を併せ持つ新しい薬です。作用機序としてミトコンドリアを介していると推定されています。(2021年8月)

 

注射薬

インスリン分泌促進薬

インスリン製剤:身体から出るインスリンの量や作用の不足を体外から補います。

作用発現時間や持続時間により、下記のように分類されています

  • 超速効型
  • 速効型
  • 中間型
  • 持効型
  • 混合型 (超速効型か速効型と、中間型か持効型が一定の割合で混在)
インクレチン製剤

GLP-1受容体作動薬:血糖依存性にインスリン分泌を促進、グルカゴン分泌を抑制、また食欲を抑制する働きもあります。1日1回のほか、週1回製剤、持効型インスリンとの混合製剤もあります。最近では内服薬も登場しました。

インスリン療法の絶対的適応

  1. インスリン依存(欠乏)状態
  2. 高血糖性の昏睡
  3. 重度の肝障害、腎障害を合併している
  4. 重症感染症、外傷、外科手術時の血糖コントロール
  5. 糖尿病合併妊娠
  6. 静脈栄養時の血糖コントロール

インスリン製剤の相対的適応

  1. インスリン非依存状態でも血糖値が高い(空腹250mg/dl、食後350mg/dlなど)
  2. 経口薬で良好な血糖コントロールが得られないとき
  3. 痩せ型で栄養状態が低下している場合
  4. ステロイド治療時の高血糖
  5. 高血糖が持続しインスリン分泌・作用が悪くなっている状態( 糖毒性 )を積極的に解除する場合

 

 

糖尿病は治療により軽快・安定することはあっても、残念ながら現在では治癒する病気ではありません。 治療内容にかかわらず良好な血糖コントロールを維持し、合併症の発症を予防することが、将来の健康的な生活につながります。

長年付き合わなくてはならないことを考えると、糖尿病の知識を付けることも大事です。 良い血糖管理が維持出来るようアドバイスをしたいと思いますので、糖尿病全般に関して気になることがありましたら遠慮なく質問してください。

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